いじめ対策をテーマに私たちスクールガーディアン事業部と、SNS見守りアプリ「Filii」を提供するエースチャイルド株式会社がそれぞれの取組みを紹介するコンテンツです。
いじめ匿名通報アプリ 「Kids’ Sign」
Filii -世界とつながる時代のこどもセキュリティ-
<バックナンバー>
今回はKids’ SignとFiliiが生まれた背景やサービスに対する思いについてインタビュー形式で紹介いたします。
アディッシュ株式会社スクールガーディアン事業部/平田優さん
事業部の中でサービス名を募集しました。いくつか案が出てきた中から、メンバーの多数決によって決まりました。
選んだ観点としては、子供たちの中で使われ、気軽に声にしやすいネーミングであること、そして「想い」をもって世の中に浸透していきそうなイメージを持てることを想定して最終的に「Kids’ Sign」と名付けました。
2007年からネットパトロールを行ってきましたが、公開されたオープンな場所でのやりとりから、昨今では閉鎖的いわゆるクローズドで周りから見えにくい場所でのやりとりが増えているように感じます。そんな中で、子供たちの声なき声を1つでも多く拾いたい。勇気をもってあげてくれた声によって、1人でも多くの子供たちが救われたら良いな、という想いから誕生しました。
子供目線であるといった点ですね。主に以下の3点になります。
いじめの通報というよりは、通報項目において工夫した通り、「心配な友達を助けたい」といった通報が多く届いているように感じます。自分を助けてほしいという通報があったこともありました。
問題が深刻になってしまう前に、友達の「ちょっとした変化」に気づけること、声をあげてみようかなと思うきっかけを創出できているのでは、と思えた時は、我々が本サービスを提供する意義だな、と改めて感じることができます。
本サービスは匿名通報サービスです。そのため管理者でも誰が投稿したかは一切把握できない仕様となっております。また、機微な個人情報を扱っておりますので、弊社で通報情報の取捨選択は行わず、すべて学校様に報告するようにしています。
Kids’ SignやFiliiのようなサービスが必要のない世の中になったら本当に平和だろうなと感じます。ですが、悲しいことに「ゼロ」になることは難しいだろうなとも感じています。
本サービスをつくった背景のように、1つでも埋もれてしまいそうな声や、私は関係ないといった1人でも多くの傍観者を減らしたい。社会全体が声を挙げることが当たり前になるようにしたい。そんな強い想いは継続していきながら、さらに本サービスが世の中に浸透していくよう働きかけていきたいと考えています。
エースチャイルド株式会社代表取締役CEO/西谷雅史さん
Filiiは、ラテン語で「子どもたち」を意味する単語になります。子どもたちのネット上の安全を守るというテーマのもと、検討する中で、Filiiが分析対象としているFacebookの創業者マーク・ザッカーバーグがヘブライ語やラテン語の読み書きが流暢ということを知り、それにあやかりさまざまな言語から候補を出しました。
「1語で名前を付けたい」、「どこかで聞いたことあるようなフレーズ」、という決め手で、Filiiに決めました。
2013年の春ごろでした。ネットのトラブルに関して毎日のように報道が続き、気になって現状を調べていると、「いじめで自殺した児童の遺書」が、ネット上に数多く公開されていることを知りました。本人が遺書に記載するかたちで望んだものや、同じような悲劇を生まないためにと、遺族が公開しているものです。数十の遺書や背景を説明する文章を読んでいくと、いくつかの共通点があることに気づきました。
1. 周りが気づいてあげられなかった(気づいてくれなかった)
2. 周りに言えなかった
3. 親に心配をかけたくないので隠していた
3番目の、「親に心配をかけたくないので隠していた」という共通点にとても衝撃を受けました。保護者としては、そのような状況を想像しただけで耐え難いものです。遺族の苦悩は推し量ることもできません。
この「親に心配をかけたくないので隠していた」、その結果最悪の事態に、という状況を少しでも減らすことができないか?「もしネットの上だけでも、いじめの兆候(犯罪被害などの危険も含めて)を捉え、伝えることができる仕組みがあればどうだろう?」と考えたことがFilii誕生のきっかけでした。アプローチはさまざまあると思います。Filiiは「危険情報の親子共有」を目指して開発をはじめました。
以下で遺書についての記事を掲載しております。
遺書の共通点 いじめ自殺
子供ユーザーの登録画面。子供の理解を第一に考え文言なども工夫されている。
「子どもの同意をしっかり取る」という点です。子ども自身に自衛手段の1つとして使ってもらいたいと考えています。導入には、子どもとの話し合いが必須となっており、保護者の一存で導入はできないようにしています。
子どものスマホに設定する過程で、子どもにもサービスの主旨を説明し、重要なポイントは子ども自身に同意を取る、子ども自身が設定を外す権限を持つ(オプトアウト)ように作られています。
リリース前の想定とは異なるという点では、検知される単語が想定とは異なっている点があります。当初、検知対象となる単語数8,000語でスタートしましたが、隠語や略語などをより多く集めるため、現在約20,000語の単語を登録しています。隠語や略語などは日々増え、地域性などもあるため、検知できていないものもあります。これを考慮しても、検知される単語は圧倒的に分かりやすいものが多いということです。「バカ」「うざい」などの単純なものです。
検知されるものがすべていじめというわけではないので、「いじめは単純な単語で行われる」ということではありません。少なくともあまり難しい単語はそもそも会話に出てこないという点を考慮しながら、より検知精度を上げていくことを検討する必要があるという認識です。
多方面のニーズという点では、企業での利用ニーズが挙げられます。LINEやFacebookなど、企業用SNSなどを社内コミュニケーションツールに使っている企業が増えてきています。これをFiliiの対象にしたいというニーズです。検知する内容は「社内いじめ」も対象ですが、「情報漏えい」、「メンタル不調」などにニーズがあります。現在、実際にいくつかお話をいただいているという状況です。Filiiをベースとし、今後この方向への発展がありそうです。
監視は、「何らかの手段や仕組みを用い、対象の状態や状況の変化を逐次に知ることができるようにすること」と考えています。Filiiではそこまでのことはできません。Filiiでは、「見守り」もしくは「自衛手段」という表現を用いており、「監視」という表現をしたことは一度もありません。ただ、この判断は対象の子ども自身がどう感じるかという一点の問題です。Filii導入に際して、ネットやスマホの危険な点や便利な点、どのような使っていくか、家庭のルールは?などを親子で話し合う中で、必要性を認識し、「見守り」もしくは「自衛手段」として選んでいただければと考えています。
Filiiを通してネットいじめをはじめとした、さまざまなネットトラブルやその対策について話し合う機会を提供できているものと思い、まずはそれだけでも立ち上げた意味があったと思っています。
ネットやスマホは便利なものですが、使い方を誤ればとても危険なものでもあります。この点、正しく知ってほしいと思い、弊社でも学校や地域などにご依頼いただき、啓発活動を実施しています。
Filiiは子どもを守る手段のひとつです。Filiiだけでなく、スクールガーディアンや、Kid’s Signのようなサービスなど、家庭や学校で必要とする対策に合わせた選択肢があると思います。Filiiがサービスを続けることで、さまざまな問題意識や課題に新たに気付き、よりよい選択肢が増えるよう、世の中に寄与していければと考えています。Filiiももちろん、より進化していきます。
ネットいじめをはじめとしたさまざまなネットトラブルの解決は、1つのサービスやツールだけで実現できるものではありません。家庭と学校、地域や関連組織などの協力が必要不可欠です。Filiiは、この連携を助け、うまくつなぐための仕組みとして、社会全体で子どもを守る動きをサポートしていけるサービスとなれればと考えています。
Kids’ Sign、Filii共に中心には子供たちがいます。いじめを受けている子供の周りにいる人達が気づいたり、声を挙げる機会を作ることが、問題の解決につながります。サービスは、それぞれでも思いはひとつです。Kids’ SignとFilii、そしてスクールガーディアンが協力体制を組めば、より良い子供社会を築く一端を担えることでしょう。