自分以外の人たちの苦難や困難な状態に対して、共感をすることにより、あたかも自分が経験しているかのように心が疲れてしまったり、ストレスを引き起こしてしまったりする現象を言います。大きな災害や事件・事故などの情報を様々な場所で見聞きすることで、心理的疲労が増すことが事例として多く挙げられます。
「共感疲労」は米国の心理学者チャールズ・フィグレーが1995年に著書で定義を提唱しました。共感疲労は、英語で「compassion fatigue」と表現され、「同情疲れ」「思いやり疲労」と訳されることもあります。
近年、SNSの普及により、子供たちはショッキングなネットニュースや動画、画像を絶えず目にすることが出来てしまう環境に置かれています。そうした動画や写真を見ることでダメージが蓄積され、「共感疲労」を引き起こすことになります。
また、LINEやInstagramのダイレクトメッセージ機能のような他者が見ることができないやり取りの中で友人の悩み相談に親身になるあまり、自分自身の心が摩耗してしまいます。初めは「友人の力になってあげたい」と思っても、関わっているとストレスがたまり、心身のバランスを崩してしまうことにつながります。これが中高生における「共感疲労」の大きな原因になります。
真面目で責任感が強く、他者への配慮に長けた人が陥りやすいと言われています。
「思いやり」や「優しさ」が、自分の感情と他者の感情の境界線を曖昧にし、深刻なメンタルヘルスの悪化を招くことがあります。
・情報のコントロール
SNS上で生徒自身が取り入れる情報をコントロールできるようになることも大事ですが、先生や保護者など周りの大人も気にかけてあげることが大切です。
また、脳が最も不安定になりやすい深夜は共感疲労を加速させるため、夜にはスマートフォンなどを見ないことも共感疲労を避ける選択肢の1つになります。
・相手を全て理解しようとしない
他者の感情との境界線を意識することが大切です。境界線があいまいだと、相手の気持ちを基準に考えてしまいがちになってしまいます。その結果、相手の全てを理解しないといけないように感じてしまうかもしれません。
「相手と自分は違う存在だ」と認識することが共感疲労を引き起こさないためにも大切なスタンスになります。
・自分の気持ちを話す
一人で辛い気持ちを抱えずに、今感じている感情を口から出して信頼できる人に話すことは、辛い気持ちを自身から「手放す」ことにつながることがあります。自身の体に負の感情を残さないようにすることが大切になります。
・しっかり睡眠をとる
睡眠時間が減少すると、イライラしたりネガティブな心持ちになったりすることが脳科学の研究から分かっています。
・オンオフを心がけ、気分を切り替える
ネガティブなことに囚われてしまうとそこから抜け出せなくなることがあります。
その日あった「良いこと」を思い浮かべるなど、できるだけポジティブなイメージを持つ時間を作ることは共感疲労に陥りやすい人にとっては大切です。
生徒指導の現場で、以下のような変化を見せる生徒はいませんか?
感情の麻痺
以前は明るかった子が、急に無表情になったり「どうでもいい」と口にしたりする。
過度な回避
仲の良かったグループから急に距離を置く。
身体症状
検査で異常がないにもかかわらず、頭痛や腹痛による遅刻・欠席が増える。
これらは単なる「反抗期」や「サボり」ではなく、溢れかえる他者の感情から自分を守るための、無意識の防御反応である可能性があります。
先生方にお願いしたいのは、子供たちに「自分を助けられない者は、他者を助けられない」という視点を持たせることです。
境界線の周知
友人を助けることと、友人の問題を自分のこととして背負うことは別物であると、伝えていくことが大切です
教員自身のセルフケア
実は、生徒に寄り添う先生方ご自身も共感疲労のリスクを抱えています。先生方が「適切な距離感」を保って接する背中を見せることが、生徒にとって最大の教育につながります。
子供たちが「誰かのために」と動けること、周囲に気を遣うことは素晴らしい資質です。しかし、その気持ちが燃え尽きてネガティブな方向へと進んでしまわないよう、私たち大人が「立ち止まる勇気」と「境界線の引き方」をガイドしていく必要があります。
子供たちが、健やかな心で互いを尊重し合える環境づくりの一助となれば幸いです。