馴染みのない言葉に感じた方もいるのではないでしょうか?未成年の課金に関するトラブルは近年数多く認識されています。課金の経験について、令和4年度の東京都教育委員会の調査では、小学校では23.7%、中学校では31.9%、高等学校では39.2%、特別支援学校では19.5%、全体では27.4%と約4人に1人の児童生徒にオンライン上での課金経験があることが分かっており、子どもたちにとって課金は一般的なことになりつつあることが分かります。
しかし、保護者の許可を得て、お小遣いやお年玉などで課金をすることに問題はありませんが、内緒で高額課金してしまっている例も多いのです。
近年では、コロナ禍を通じて普及したライブ配信への課金についても、視聴するだけや少額の課金だけでは気持ちが収まらなくなり、気付くと高額課金をしていた、という相談が寄せられています。
(出典)東京都教育委員会HP_報道発表資料:https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2023/release20230605.html
埼玉県HP_相談事例:
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0304/soudanjirei/20240925.html
「ライブ配信」とは、SNSなどインターネット上で、映像をリアルタイムにリスナー(視聴者)に配信することを指します。
ライバーと呼ばれる配信者は、SNSなどあらゆる媒体を用いてリスナーを獲得し、日々さまざまな内容で「リアルタイムでのコミュニケーション」を提供しています。
ライブ配信を用いたコミュニケーションは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い急速に普及し、2021年にはライブ配信アプリ 17LIVE(イチナナ)のデータを取り上げても、5万人以上もの人がライバーとしての活動を行っていることが分かっています。
ライバーたちは、料理やメイク、雑談や楽器演奏など様々な姿をリアルタイムで、リスナーに発信しています。
インターネット上のライバーに対して、リスナーが自ら指定した金額をオンライン送金する(お金を渡す)ことを「投げ銭」といいます。
現在では、YouTubeやTikTokなど数多くのSNSが、この投げ銭システムを採用しています。
リスナーたちは、「投げ銭」を行う事によって、応援しているライバーから名前を呼んでもらえたり、自身のコメントが他のリスナーのコメントより大きく表示できるなど、ライバーと繋がりを感じる事ができる仕組みとなっています。
しかし、この「投げ銭」というシステムは、未成年のトラブル要因の一つとなっています。課金問題は、これまでにもインターネットやゲームへの「依存」と関係すると言われてきましたが、それにはどのような心の動きや環境が影響するのでしょうか?
(出典)ヤフー記事(課金依存症):
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ed18d9efa27d11adeeb8e24f24c6de52d344e878
ひとことにまとめると、「課金をしたことに対する見返り」と言えるのではないでしょうか?
例えば、オンラインゲームに1万円課金したとします。しかしそれは、欲しいアイテムを手に入れることが目的となるため、課金することでアイテムを購入した自分自身にメリットをもたらす、と考えられます。
一方、ライバーへの投げ銭(課金)はどうでしょうか。
1万円分のアイテムをオンライン上で購入して送る・・・するとライバーはリアルタイムで「〇〇!!」と画面越しに自分の名前を呼び「アイテム送ってくれてありがとう」「嬉しい!」「大好き!」などと笑顔でお礼を言ってくれます。つまりこれは「お金を費やしたことへの見返り」であり、配信者にも自分自身にもメリットをもたらす仕組みであるともいえます。
近年では、リスナーがどれだけライバーに課金を行ったか「ランキング」として集計・反映され、それによって配信者の仕事が決まるという、オーディションを目的に使われることも多くあります。つまり、リスナーの投げ銭が、直接配信者の「目に見える利益」につながるのです。
ライバーへの投げ銭が辞められない・・もっとお金を使いたい・・そんな心の動きにはどのような要因が考えられるのでしょうか?
ライバーに「覚えてもらいたい」という小さな欲求が投げ銭により名前を呼んでもらえるようになることで満たされます。しかし欲求は大きくなりやすく、投げ銭を重ねることで「もっと必要とされたい」という大きな欲求に育っていくことは自然なこととも言えるかもしれません。
同時に、配信者への投げ銭は「自分の理想を実現したい」という心理にも影響していると考えられます。「投げ銭をすることで配信者がより有名になるよう育てたい」「もっと応援したい」こうした欲求が依存へと繋がっていくこともあるのです。
(※1 参考:社会福祉法人京都基督教福祉会 HP内資料_https://kyoto-christ.org/files/koguma/colume/148.pdf )
ライブ配信を視聴し、投げ銭を行うのはもちろん自分だけではありません。特に、有名なライバーになるほど、画面上には次々と高額なアイテムが表示されていきます。
所持している現金は投げ銭によって、金額に応じた様々なアイテムに姿を変え、「この人は◯万円投げ銭した」と、リスナー全員に伝わるようなシステムになっているパターンも多くあります。
こうしたライブ配信の仕組みにより「自分ももっとお金を使わなきゃ!」という競争心につながりやすいと考えられます。
近年では「推し活」という言葉も多く耳にしますが、中でもライブ配信での投げ銭は、推しに自分の存在を知ってもらい、ファンとして認めてもらう手段の一つになっています。
未成年でも、YouTubeやアプリを用いて気軽に「推し」を応援できるようになり、趣味として日常生活の楽しみとなるケースも多くあります。学生生活の中でも、共通の推しを通じて友人関係が深まり、放課後は推し活話しで盛り上がるなど、大切な時間を与えてくれる存在になることもあります。
しかし、「○○ちゃんはこんなに課金しているのに自分は出来ていない」。時には金銭的な側面を通じて周囲と比較してしまったり、仲間の輪を外れないために無理な課金をしようと考えてしまうことも自然な心の動きです。「みんなやっているから」「このくらいなら使っても良いよね」このような軽い気持ちがのちのち依存につながるきっかけにもなりかねません。
中学・高校生の学生たちは「アイデンティティを確立する段階」に置かれています。つまり、「あらゆる社会の常識をひとつずつ学んでいく時期」であると同時に、「周りの友達や環境に流されやすくなってしまう時期」「自分の価値を模索する時期」でもあるのです。
投げ銭をすることが「自分の価値」と感じた若者は、「自分自身が見出した価値」という名の投げ銭に依存してしまうことも容易に想像できますよね。中高生の時期に「認められたい欲求」が生まれるのは自然なことです。そして、本来その他者から認められたいという承認欲求は、生きていく上で大切な欲でもあります。
しかし、それが歪んだ方向や間違った方向に向かないように私達教員も目を向けること、と同時に学生たちが今感じている「他者から認められたい思い」を理解してあげることも大切なのではないでしょうか。
時に、歪んでしまった欲求は取り返しのつかない犯罪にもつながるリスクがあります。「投げ銭するお金がもう少し欲しかった」そのような理由で「闇バイト」や「万引き」などに繋がる可能性も大いにあるのです。
いかがでしたでしょうか。学校で過ごす時間を切り取るだけでは見えないSNSでのトラブル・・・「今どんなものにハマっているんだろう?」休み時間や放課後に、少し目を向けるだけでも、また新たな実態が見えてくるのかもしれません。
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