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“見えないいじめ”を理解する ~ネット時代のトラウマケア~

2025.07.28

現代のいじめは姿を変え、目に見えない場所で静かに、けれど確実に心を傷つける形へと変化しています。

私たちが直接目にすることは少ないかもしれませんが、オンライン上で繰り広げられる言葉の暴力や、実生活にも影響を与えるような投稿によって、生徒たちの心に大きなダメージを与えていることも少なくありません。

スマホの中で交わされるグループチャットでの仲間はずれ、SNSでの悪口、写真の拡散――。
いじめによって心に傷を負った子どもたちには、どのような内容であれ様々なケアが求められますが、特にこうした“見えないいじめ”への理解と対応には、「トラウマ」という視点が欠かせません。

いじめは「出来事」ではなく「体験」

子どもがいじめに遭ったとき、その記憶は単なる「出来事」ではなく、「自分が傷ついた体験」として心に深く刻まれます。
特にSNS上でのいじめは、周囲の目に触れにくく、夜も休日も終わらない「心の攻撃」として続くことがあります。

「スマホを開くたびに傷つけられる」といった、終わりのない不安や羞恥、孤立感は、見えにくいけれど確実に心を蝕んでいきます。

いじめは「起きたこと」以上に、子どもがどう感じ、どう記憶に残したかが重要です。
特にネット上で起こるいじめは、子どもの心に深く、長く影響を残す“体験”として記憶されることが多いのです。

ネットいじめの特徴

ネットいじめの特徴を5つ紹介します。

 

①どこまでも追いかけてくる

学校が終わっても、夜になっても、スマホを通じていじめが終わらない――これがネットいじめの最も大きな特徴のひとつです。
グループLINEやDM、SNSの投稿などを通じて、子どもたちはいつ攻撃されるか分からない不安を抱えています。

 

②拡散される恐怖、消えない恥ずかしさが深い心の傷になる

ネットに投稿された言葉や画像は、一度拡散されると完全には消せないことが多く、「世界中に知られてしまった」と感じる子もいます。
羞恥、怒り、無力感、自己否定など、それは大人が気付かぬうちに深い心の傷になってしまうこともあります。

 

③大人には気づかれにくい

裏アカウント、鍵付きアカウント、限定グループなど、子ども同士にしか見えない空間でいじめが行われるため、周囲の大人には非常に見えにくいのもネットいじめの特徴です。

 

④誰が加害者か分からない集団的構造

匿名性や“いいね”などの反応も加害の一部となる中で、被害者は「誰が敵か分からない」という不信感と孤独感を抱えることになります。

ネットいじめは1対1に限らず、集団的かつ曖昧な構造をとることもあります。

 

⑤自分を責めてしまう心のクセ

「悪いのは自分かもしれない」

攻撃的な言葉や無視、ブロックといった行為を受けることで、子どもは自分の存在そのものを否定されたように感じてしまう可能性も考えられます。

 

このように、ネット上には、知らぬ間に心が脅かされてしまう恐怖や不安が潜んでいます。

では、このような心に負荷がかかる状況が続いてしまうと、どのような危険があるのでしょうか。いじめなどのつらい体験が、のちの不安や自己否定感、人間関係の困難などにつながることがあり、それを「トラウマ」といいます。

一般的に「トラウマ」とは、心に強い衝撃や苦痛を受けた体験が原因で、時間がたってもその記憶や感情に苦しめられる心理的な傷のことを指します。

言わば、「安全が壊れた体験」であり、ネットの世界には、子どもたちの心の土台を揺るがすリスクが潜んでいます。
SNSの普及に伴いトラブルが増えている今、私たち大人も適切な支援の視点を持つことが求められています。
そこで、今回の記事では、「トラウマインフォームドケア(TIC)」という視点を取り上げます。
これは、「その子の行動の背景に、傷つき体験があるかもしれない」という前提で関わる支援姿勢のことです。

トラウマインフォームドケアとは?

ネットいじめには、見えにくく、深く、長く続く傷つき体験が含まれます。

だからこそ、「この生徒の行動の背景には、過去の、あるいは進行しているいじめによる傷つきがあるかもしれない」と捉える視点が大切です。例えば、これまで穏やかだった生徒が、突然先生であるあなたにきつい言葉を投げて来た時に、「あれ、何か今までと違う」と、ふと感じられることなど。これが、トラウマインフォームドケア(TIC)の基本です。

TICは特別な技術ではなく、

● 子どもが安心できる関係をつくること
● 傷つきを前提に「配慮あるまなざし」で見ること
● 回復には「信頼関係」が必要だと理解すること

といった、すべての大人が実践できる支援の姿勢です。
何も言わずに毎日を過ごしているように見える子どもも、「誰かに気づいてほしい」と思っているかもしれません。

子どもの「サイン」に気づくために

トラウマを抱えた子どもは、「助けて」と言えないことがほとんどです。だからこそ、大人が小さな変化=SOSのサインに気づくことが大切です。

これらの変化は、ほんの小さなきっかけから現れることがあります。

「何かあったのかな?」と関心を寄せるまなざしが、子どもを守る第一歩です。

大人の最初の声かけが土台になる

子どもに話を聞くとき、つい「何があったの?」「誰がやったの?」と問いがちですが、トラウマを抱える子どもには、まずは、安全だと感じられる環境があることを知ってもらう必要があります。

● 「ここは安全な場所だよ」
● 「あなたを一人にしないよ」
● 「悪いのはあなたじゃないよ」

といった安心感を伝える声かけが、安全だと感じられる環境作りにつながります。
一方で、

● 励ましすぎる
● 原因を急いで探る
●すぐに加害者に介入する

といった対応には注意が必要です。本人の語りが自然に出てくるまでは、焦らず、寄り添う姿勢を持ち続けることが、大人に求められる関わり方です。

まとめ

いじめは“心の深い体験”として残ります。

そのとき、子どもが出会った大人が「この人は自分を信じてくれる」と思える存在であったなら、回復の道は大きく開かれていきます。

これはネットいじめに限らず、すべての支援を必要とする子どもに共通する視点です。私たち大人にできるのは、完璧な支援ではなく、“安心と信頼の土台”を共につくることです。

その一歩を、ぜひ学校現場から広げていけたらと思います。

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