「プロバイダ責任制限法」は、正式には「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」といいます。Webサイトや電子掲示板などで行われる情報の流通によって、権利侵害があった場合において、プロバイダ、サーバ管理者・運営者、掲示板管理者などの損害賠償責任の制限と、発信者情報の開示を請求する権利を定めたものになります。
プロバイダと呼ばれる者は大きく2つに分類されます。
①通信機器や設備を使い通信の仲介を行う者
・インターネット回線をインターネットに繋げる業者
②その機械やシステムを不特定多数の人に提供している者
・SNSなどのサイト運営者
・ブログの管理人など
接続業者だけでなく、SNSやブログの運営会社、掲示板などの管理人もこの法律においてはプロバイダに含まれるということになります。
参考:あなたの弁護士 図解でわかるプロバイダ責任制限法!この法律で被害者ができるコトとは
この法律は、ネット上で名誉棄損や誹謗中傷など、匿名で不法な情報が発信された場合に、被害者とプロバイダを守るための法律です。
例えば、プロバイダが誹謗中傷などの書き込みを被害者から削除要求された場合、勝手に削除してしまうと、加害者側から「表現の自由を侵害した」と損害賠償請求をされてしまう可能性があります。
このような板挟みの状態になってしまうのを避けるためにあるのが「責任制限」です。一定の条件と引き換えにプロバイダに対する損害賠償請求を阻止することができます。
参考:あなたの弁護士 図解でわかるプロバイダ責任制限法!この法律で被害者ができるコトとは
https://yourbengo.jp/internet/925/
このように、「被害者を守ること」と「表現の自由等の確保」のバランスを保つことに留意したものが責任制限になります。
SNSなどで誹謗中傷などを受け、被害者が発信者を特定し、さらに損害賠償請求するためにこれまで下記のような二度の裁判手続が必要でした。
1)送信防止措置の申し立て
被害者から削除の申立があったからといって、すぐに該当の書き込みを削除してしまうと、前述した通り表現の自由に違反してしまう可能性があります。そのため、一度発信者に削除請求の旨を伝えます。その後7日間以内に反論がない場合に削除が行われます。
2)発信者情報開示の請求
「発信者を訴えたい」「罰則を与えたい」と思った場合に特定するための発信者の氏名・住所などの開示請求を行います。
このように、これまでSNSで誹謗中傷された場合には、SNSの運営者に申立をし、「どこの接続業者から誹謗中傷するコメントが書き込まれたのか」を明確にしなければなりません。次に携帯電話会社やインターネット接続業者に対して、「投稿者の氏名や住所の開示請求」をするという二度の裁判をする必要がありました。
さらに、長い時間をかけて手続きしたことでログが消滅して、発信者の特定が困難になる場合もありました。
多くの時間とコストがかかり、助けを求める被害者にとって大きな負担になってしまいます。
前述した通り、これまでは発信者の特定までに二度の裁判上の手続きが必要でした。改正によって一度の裁判上の手続で発信者の特定までが可能となる新たな裁判手続(非訟手続)が創設されました。
今回の改正では前述した裁判手続が創設されただけではなく、従来の法律では開示の判断がわかれていた「ログイン時のIPアドレス」なども開示対象となるよう開示範囲が拡大されました。
裁判所からプロバイダに発信者情報の開示請求が行われた際、プロバイダはこれに応じるかどうか発信者に意見を聞くようになっています。
しかし多くの場合、発信者が開示に同意することはありませんでしたが、改正後は開示に応じない場合発信者はその理由を明確にしなければなりません。
今回は、そもそもプロバイダ責任制限法とは何か、そして2022年10月1日から新たに改正されたポイントについてご紹介しました。
SNSなどの誹謗中傷やいじめは、年々多くの問題が浮き彫りとなっています。それが原因となって自ら命を絶ってしまう大人も子どももいます。今回の改正がいじめや誹謗中傷投稿の抑止になることを願っており、匿名だからといって好き勝手に書くことは控えることを、しっかりとスクールガーディアンの啓発活動を通して広めていきたいと感じております。