これまで盗撮は刑法での規定がなく、全国一律で取り締まる法律はありませんでした。
盗撮を取り締まる際には各都道府県の迷惑防止条例が使われてきました。
しかし、スマートフォンの普及に伴い、盗撮行為の検挙件数が年々増加していることなどから「撮影罪」が新設されることになりました。
正式名称は「性的姿態等撮影罪」であり、正当な理由がないのに「性的姿態等」を撮影すると処罰の対象になります。
具体的に「性的姿態等」とは、以下の3つを指します。
①性器や臀部、胸部などの性的な体の部位
②身に着けている下着
③わいせつな行為・性交等がされている姿
さらに、撮影行為だけでなく、撮影しようとする行為や、盗撮画像の保管・提供なども処罰の対象となっています。
法務省では正当な理由として以下の例を提示しています。
・医師が、救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールにしたがって撮影する場合
・親が、子どもの成長記録として、自宅の庭で上半身裸で、水遊びしている子どもの姿を撮影する場合
・地域の行事として開催される子ども相撲の大会において、上半身裸で行われる相撲の取り組みを撮影する場合
このように「正当な理由」が認められる場合はかなり限定的な場面であると考えられます。
3年以上の懲役または300万円以下の罰金刑に処されます。
これまで適用されていた、各都道府県による迷惑防止条例よりも重い刑となりました。
(例えば、東京都迷惑防止条例では1年以下の懲役または100万円以下の罰金でした。)
以下の場合では「性的姿態等撮影罪」が適用され、処罰の対象となります。
・女性のスカートの中を盗撮する行為
・スカートの中を盗撮しようとスマホを向けたが、実際に撮影までは至らなかった行為
・盗撮したデータを友だちに渡した場合
以下の場合では「性的姿態等撮影罪」の適用外となります。
・部活中のユニフォーム姿の撮影
→性的意図の有無の線引きが困難とのことで、適用外となりました。
・電車内などで制服姿の生徒の盗撮
→着衣姿での盗撮は適用外となりました。ただし下着などが写っている場合は処罰の対象です。
新しく施行された「撮影罪」はこれまで以上に盗撮等の行為を厳しく取り締まる一方、着衣姿の撮影については適用外になるなど、完全に盗撮行為を罰せられる法律であるとは言えません。
線引きが難しい問題ではありますが、今後より被害者に寄り添った法律になっていくことを望みます。