直近のデータによると、令和3年では子どもの自殺が減少しているものの、令和2年度では「499人」と過去最多であったと文部科学省は発表しています。その令和2年度では、8月が一番多く、新学期前後が特に目立っています。
そして、子どもの自殺は高校生>中学生>小学生の順に多く、動機として「学業不振」「進路の悩み」「親子関係の不和」に次いで「健康問題」(うつ病等)による影響も増加していることがわかりました。
出典:児童生徒の自殺対策について(厚生労働省・警察庁)
令和元年(平成31年)及び令和2年における児童生徒の自殺の原因動機別表① ~原因・動機数における上位10項目~
夏休み明けの自殺の認識が広がったのは「自殺対策白書」を内閣府が発表した2015年です。
1972〜2013年の18歳以下の自殺について分析が行われ、9月1日前後が最多だったことから、「休み明け前後は大きなプレッシャーや精神的動揺が生じやすい」と指摘されています。
自殺の多くは、解決すべき課題を抱え、それがストレスで憂うつな気分になり、行動に移すというプロセスで起こると言われています。
「勉強したくない」
「嫌いな先生がいる」
「いじめっ子に会いたくない」
このように子どもたちは、新学期を迎えるにあたって、さまざまな不安や課題を抱え、気持ちを切り替えようとしたり、心の準備をしようとします。学校が休みでしばらくストレスがなかった状態から、ストレスを抱える時期に入る境目は特にプレッシャーがかかります。
ネットいじめにより年中「ストレスフルになる子ども」も
昨今増加している「ネットいじめ」は、時間場所を問わず24時間365日インターネット上で行われ、学校内や放課後におきるいじめとは違い、境目がありません。夏休み期間であっても、ネットで終始つきまとわれる不安から、年中ストレスを抱える子どもたちもいることも考えられます。
子どもが、学校や生活を否定するような言動があった場合、深刻な悩みを抱えていると考えると良いでしょう。
例えば、子どもが「学校に行きたくない」と打ち明けたり、子どもの表情や言動が乏しくなる傾向が見受けられたとします。
こうした時に、問いかけても反応が鈍かったり、夏休みの宿題に取り組もうとしない、といったような態度もサインの一つと考えられます。
このように、子どもの異変に気づいたら、まずは話を聞くことが大切です。
ご存じの方も多いと思いますが、考え方の一つとして「TALKの原則」という考え方があります。
〈TALKの原則〉
【Tell】言葉に出して心配していることを伝える
【Ask】「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる
【Listen】絶望的な気持ちを傾聴する
【Keep safe】安全を確保する
詳しくは、以下の「教師がしっておきたい 子どもの自殺予防(文部科学省)」にも手引きが載っていますので参考にしていただければと思います。
今回は、自殺が増える夏休み明けに「異変のサイン」を見逃さない為のいくつかのポイントをご紹介しました。
インターネットが発達し自殺企図につながるような情報も多く、こうした情報に子どもたちは簡単にアクセスできてしまうため保護者は子どもの検索履歴をチェックするのもひとつの対策方法でしょう。異変に気づいたら、子どもに寄り添い味方であることをしっかりと伝え「対話」を心がけてください。そして子ども自らが、自分の異変・状態に気づくことが重要です。
私たちは、いじめ匿名通報サイト「スクールサイン」を通じて子どもたちからも、SOSを出せる環境を創り、自殺願望や悩みをもつ子どもたちの早期発見につなげていければと思っています。