学生限定SNSコミュニティアプリひま部は、アプリケーションのダウンロード数は50万*1を突破しており、日本では数少ない学生限定コミュニティの一つです。
Twitterのように自由に投稿ができる機能と、LINEのようにチャットや通話ができる機能があり、誰とでも気軽にやりとりができるサービスになっていました。
年齢確認には学生証の登録が必要でしたが、一部の機能は登録なしでも使用できるため、事実上学生以外の利用も可能でした。しかしながら、「学生限定」と謳っていたため、ユーザーたちの心理的ハードルは低く、かなり危険性の高い状態になっていました。
知らないのは大人だけ!?中高生に人気のアプリケーション事情 ~SNS編~ | ネットいじめ対策・学校非公式サイト対策ならインターネットパトロールのスクールガーディアン
中高生に人気のTikTokは、学生の間で火が付き、たった一年間でTwitterやInstagramに並ぶほど主要なSNSになりました。このように、新しいアプリがリリースされ爆発的な人気になることは、珍しいことではなくなってきました。Instagramストーリーズの「親しい友達」機能やLINEの「OpenChat」など、既存のアプリにも日々新しい機能が生まれています。 …
*1 2020年1月23日時点 GooglePlayの情報による
実際に、ひま部を悪用して、中高生に裸の写真を送信させたり、性的暴行を加えたとするなどの事件も多発していました。また、そのような行為だけでなく、個人情報を無断で公開したり、なりすましなどの嫌がらせ行為も増加していました。
このような事態への対策として、運営会社ではパトロールや年齢確認などの強化を行っていました。しかし、規制を厳しくすることが、ひま部の理念である居場所やつながり作りを難しくしてしまうのではないかとの懸念から、2019年末でのサービス停止に踏み切りました。
参考:
しかし、2019年の12月29日サービス停止を前に、運営会社はYay!という全年齢向けSNSアプリケーションのリリースを発表しました。
Yay!(イェイ) – 世界とつながる匿名コミュニティ
\新しい居場所!/ 『Yay!』でもっと楽しいつながりをつくろう!友達といつでもどこでも一緒に!チャット、通話、タイムラインで自由に話せるコミュニティです! \年齢確認で安全!/ 安心&安全なプラットフォーム化を進めていきます!お気づきの点がありましたらサポートまでご連絡ください。 \世界を広げよう!/ もっといろんな人とつながろう。誰もが自分を表現できる居場所をあなたに。 …
現在、ひま部の運営サイドとして使用していたLINEやTwitterの公式アカウントなどがそのままYay!の運営サイドになり、以前のひま部ユーザーたちへのサービス移行を呼びかけています。ダウンロード数は既に1万*2を突破しており、「ソーシャルネットワーキング」ダウンロードランキングの10位*3に入るなどかなりのハイペースと言えます。
実際にYay!内でもひま部の以前のアカウントを公表したり、元ひま部の利用者のグループができるなど、ひま部から『Yay!』へ移行しているユーザーはかなり多いようです。
*2 2020年1月23日時点 GooglePlayの情報による
*3 2020年1月23日時点 AppelStoreの情報による
Yay!のサービスはひま部と全く同じで、Twitterのような投稿機能とLINEのような通話・チャット機能が搭載されています。仕組みは殆ど一緒なので、ひま部を利用していたユーザーであればすぐに使用可能です。
ひま部からの大きな変化は『学生限定SNS』から『全年齢対象』になった点です。しかし、この点については、ひま部の時点から事実上学生以外も利用可能であったため、実際の変化とは言い難い部分もあります。
また、安全対策についても、AIや人力を用いたパトロールやユーザーへの啓発など大きな変化はありませんでした。身分証明書の確認についても、学生証以外の提示が可能になったことや、顔写真や住所などを隠してはいけないなどの細かい変更以外の強化はありませんでした。
ひま部は学生限定を謳っていたことから、ユーザーたちの心理的ハードルが低く、本人と思われる顔写真の投稿や連絡先の交換や出会いを求める投稿などが多くありました。外からは確認できないチャット部分も多く、セキュリティの抜け穴も多かったため、かなり危険性が高いSNSであったと言えます。
全年齢対象になったことにより、中高生ユーザーの心理的ハードルは上がった可能性は高いですが、悪意のある大人のユーザーが入り込みやすい環境になってしまったことも否定できません。更に、ひま部のサービス停止を受け、ひま部を悪用した事件の記事などが増加していました。この事態により、逆に悪意のあるユーザーの関心を高めてしまった可能性があります。
前述のとおり、ひま部からの移行ユーザーも多いため、利用者も中高生が多いことが想定されます。以前のような被害に遭遇しないためにも、サービスの動向を見守ることや、SNSの危険性の啓発などが必要といえます
アプリケーションのサービスやセキュリティはひま部と全く同じです。以前よりアクティブユーザーは減っていますが、Twitterなどに比べると他のユーザーとの接点は多いです。また、依然として中高生のアカウントには、アイコンが明らかに本人と思われる写真も多く存在します。登録の際、年齢確認で生年月日が、2002年(現在の高校2年生の年齢)が最初の設定になっている点や、ひま部から公式アカウントを受け継いでいる点などから、中高生ユーザーの中ではどこか「学生限定SNS」という意識が存在しているのではないかと思います。実際、学生以外のユーザーは殆ど見受けられず、心理的なハードルは依然低いままなのではないかと思い、逆に誰でもアプリケーションに参加可能になったのがとても危険に感じました。
SNSを悪用した事件やそれによるサービス停止の根本的な原因は、SNSの仕組みやセキュリティの問題なのではなく、ユーザーたちの意識による問題にあると言えます。一つのSNSがサービスを停止したり、大幅に変更したとしても、他のアプリに移行したり、セキュリティの抜け穴を探して悪用するユーザーは必ず現れます。
重要なのは、一人一人が高い危機意識とネットリテラシーを持ちSNSを健全な形で活用することなのではないか、と思います。