「バーチャルカード」とは、プラスチック製の実物カードを持たずに、スマートフォンやパソコン上で使えるクレジットカードのことです。決済は主にネット上で行われ、カード番号や有効期限などの情報がアプリ内に表示される仕組みになっています。
バーチャルカードには以下のような特徴があります。
バーチャルカードの多くは「プリペイド式」と呼ばれる前払い方式を採用しており、コンビニなどでお金をチャージすることで利用できます。そのため、通常のクレジットカードと異なり、信用審査なしで発行できるものも少なくありません。
バーチャルカードの多くは、アプリやウェブ上で簡単に申し込みができ、数分で発行されます。中には年齢制限がゆるく、未成年でも「保護者の同意を得た」という項目にチェックを入れるだけで、申し込みが完了するものもあります。書面での同意提出や電話確認などが不要な場合もあります。
このように、クレジットカードのように厳格な審査や発行手続きがなく、スマートフォンひとつで手軽に利用できることが、バーチャルカードの大きな特徴です。ネットショッピングや定額サービスの支払いなどにも使えるため、日常の中で便利に活用できるツールでもあります。しかし、便利さの裏には、思わぬリスクも潜んでいます。
次の章では、バーチャルカードがどのように悪用されるのか、特に中高生が巻き込まれやすい詐欺の手口について紹介します。
最近、SNSでよく見かけるのが、「○○万円プレゼント!」という投稿です。また、直接DM(ダイレクトメッセージ)に「○○万円当選!」というようなメッセージが送られるというケースもあります。
一見するとラッキーな知らせのようですが、実はこれが詐欺の始まりとなります。
①SNS上のプレゼント企画を装う
「コメントした人全員に○○円」などの投稿に誘導され、DMが届きます。
②「当選」通知とバーチャルカード作成の指示
「当選したので、受け取りのためにバーチャルカードを作ってください」と言われます。リンクが送られてくることもあります。
③チャージ(入金)を要求される
「手続きに必要なので、まず自分で1000円入れてください」「確認のために少額のチャージをお願いします」と説明されます。
④カード情報を抜き取られる
作成したバーチャルカードの情報(番号やセキュリティコードなど)を送ってしまうと、そのカードが悪用され、お金を使われてしまいます。
バーチャルカード詐欺では、特に中学生・高校生がターゲットになっています。なぜ大人ではなく中高生が狙われているのでしょうか?
クレジットカードや電子決済サービスについて十分な知識を持っていない中高生は少なくありません。「バーチャルカードって何?」「どこまで情報を教えても大丈夫なの?」といった、基本的な仕組みを知らないまま使おうとしてしまうことがあります。
詐欺グループは、中高生が知らないような専門用語を並べるなど、まるで正当な手続きのように見せかけることで、「なんとなく本当っぽい」と信じてしまう中高生の心理を利用しています。
思春期の中高生は、自分のことを「自分でなんとかしよう」と考える時期でもあります。SNSでちょっと怪しいと思うことがあっても、「親に相談したら心配されてスマホを取り上げられるかも」「怒られそうで言い出しづらい」と感じ、ひとりで抱え込んでしまいがちです。
結果として、「親にバレたら大変」という気持ちが、詐欺に引っかかっても途中で止まれない原因になってしまいます。
中高生は、まだアルバイトなどで自分でお金を稼ぐ機会が少ない人も多いため、「楽してお金が手に入る」ような話に心を動かされやすい傾向があります。
「○○円プレゼント!」などの投稿を見ると、「自分もできるかも」「副業ってこういうのなんだろうな」と、深く考えずに飛びついてしまうことがあります。
また、インフルエンサーや人気のある投稿者がそういったキャンペーンをしているように見えると、「信頼できそう」と思ってしまうこともあります。ですが、そこに詐欺グループが便乗して偽アカウントを作っていたり、巧妙な編集で本物に見せかけたりしているケースも少なくありません。
バーチャルカード詐欺の被害から中高生を守るには、個人の注意だけでは不十分です。経験や知識がまだ十分でない中高生が、自力で危険を判断するのは容易ではありません。
だからこそ、保護者・学校・社会全体が連携して対策を考え、サポートすることが非常に大切です。
子どもは、スマホやSNSのトラブルについて「怒られそう」「スマホを取り上げられるかも」という恐れから、事態が深刻化するまで黙っているケースが多いのが特徴です。
そのため、次のような「日常的な声かけ」が重要になります。
・「困ったことがあったら、いつでも話していいからね」
・「知らない人から変なDMが来たら、まず誰かに相談しよう」
・「“お金を無償であげます”って本当?冷静に考えてみよう」
特別な指導時間だけでなく、普段のホームルーム・個人面談・生活指導など、あらゆる場面で「言いやすい空気」を作ることが、子どもを守る第一歩になります。
2022年度から高校での金融教育が必修化となっていることからも、学校での金融リテラシー教育は、いまや特別な取り組みではありません。高校生だけでなく、ターゲットが低年齢化していることもあるため、すべての中高生にとって金融リテラシー教育は必要不可欠なものです。
バーチャルカードや電子決済など、スマートフォンを通じて簡単にお金を扱えるようになった現代では、「なんとなく便利そうだから使ってみた」という軽い動機で、大きな詐欺被害に巻き込まれるケースも少なくありません。
実際、バーチャルカードは実物のカードがなく、利用手続きも数分で完了するため、「現金を扱っている」という感覚を持ちにくく、金銭管理の意識が薄れがちです。
詐欺のリスクを正しく認識し、契約やお金に関する基礎的な判断力を養うためには、日常的な授業の中で「金融」「契約」「詐欺の見抜き方」などを継続的に扱い、知識として定着させることが必要です。
バーチャルカードは、スマートフォンひとつで簡単に作れる便利な決済手段として、中高生の間でも利用が広がっています。しかしその一方で、SNSでの「○○円プレゼント」や「当選しました」といった甘い言葉を使った詐欺に悪用されることも少なくありません。
詐欺を防ぐには、本人の注意だけでなく、保護者や学校、社会全体が連携してリテラシー教育に取り組むことが重要です。家庭内での対話や、学校における継続的な指導が、生徒を詐欺から守るカギになります。
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