2026.08.05
「二極化」の危機感を乗り越える。「学校全体の足並み」を揃えて進める生成AI導入。
インタビュー日:2026年7月
学校名:共立女子中学高等学校
担当者様:内田副校長先生
共学・別学:女子校
先生)高田さん(聞き手)にお世話になり始めたのは、2025年度に入ってからでしたよね。当時は、世の中にAIの波が押し寄せる中、学校の生徒に使わせるべきか使わせないべきかという議論がまだ行われていた時期でした。
教員たちもまだ慣れておらず、どう扱えばいいのかという漠然とした不安が職員室に漂っていました。生徒には使わせたくないと思いつつも、一部の先進的な教員からは「使わせないわけにはいかない時代だから、授業で使いたい」という要望が上がり、保護者の承諾を得るための通知を作成するなどの動きが始まっていました。「これからどうすればいいのだろう」という状況の中で、ちょうど前任の担当の方からお話をいただいたんです。気になっていたタイミングだったのですぐにお願いし、そこから高田さんにお世話になることになりました。
先生)新しいスキルとして学ぶには忙しすぎる、という意見はありました。ただ、使い始めること自体に対して拒否反応を示すような否定的な意見はありませんでした。前向きではあるけれど時間がない、他の業務に追われている、といった状況でした。
先生)何より一番怖かったのは「生徒に間違った使い方をさせてしまったらどうしよう」という不安でした。そこが大きな懸念点でしたね。ただ、今回の取り組みはスクールガーディアンさんからの紹介だったこともあり、非常に安心感がありました。SNSのパトロールなどでもお世話になっているので、セキュリティやモラルに関するノウハウがあるだろうという信頼感がありました。
先生)「生成AI界隈におけるモラル」が明確には分からなかったので、自分も失敗したくないし、生徒にも失敗させたくないという思いから、足踏みしている人が多かったのだと思います。新しいテクノロジーだからこそ、自分が理解できていない範囲のものを扱わせることに恐怖心があったのだと思います。
先生)どこに足がかりを作って前に進めばいいのかが分かりませんでした。私は2023年秋に、個人的に生成AIの2日間のセミナーを受けたんです。そこで最先端で進めている人たちの講義を聞いたのですが、凄すぎて「これは自分には無理だ」と思ってしまって(笑)。とんでもない世界が日常に入ってくるという不安を抱えて、情報を集め始めていた時に、ちょうどスクールガーディアンさんからボトムアップをしようという提案をいただいたんです。
先生)そうです。『「まずはみんなで最初のハードルを越えましょう」という企画です』と言われて、それならぜひお願いしたいと思いました。
先生)先進的に進めている先生と、まったく使ったことがない先生の二極化に対して危機感はありましたが、社会の情勢や子供たちがこれから使っていくことを考えると、教員側が知らないわけにはいかないという意識に変わっていきました。参加者は皆楽しそうでした。
先生)そうですね。ただ、本校としては使わせる方向で考えていました。もし使わせないという選択をするにしても、「内容を理解した上で使わせない」という判断をしてほしいと思っていました。しかし、いざ自分で使ってみると「これは使わせなきゃダメだ」という意識に変わるんです(笑)。
先生)まずは使ってみて、最初のハードルを越えることが大切だと実感しました。
先生)それは第2のハードルですね。これまで「楽をすること」よりも、時間をかけて真面目に仕事をしてきた人たちばかりですから、「こんなに完成度の高いものが一瞬で出てきていいのか」という葛藤を私自身も感じました。あまりに簡単に書類が作成できるので、最初は「何か罠があるんじゃないか」と半信半疑でした(笑)。でも、高田さんが研修会の中で「最後は自分でチェックしてください」と言ってくださったことで、AIをそのまま使うのではなく、最終チェックをする力を身に付けることが大切なのだと分かりました。
先生)2回目に参加した英語の先生は、授業用のスライドがあっという間に作成できたことに非常に驚いていました。その翌日には、今回参加できなかった先生にすぐに使い方を共有して、早速新しい教材を作っていました。便利さを肌で感じたからこそ、すぐに人に伝えたくなったのだと思います。純粋に「面白い」という感覚だったようです。
先生)アナログな時間が大切なのは間違いありませんが、アナログな作業には膨大な時間がかかります。だからこそ、デジタルで任せられる部分は任せてしまおうという感覚に、多くの先生がシフトしてきているように見えます。業務の効率化によって生まれた時間を、生徒と向き合う時間や自分のために使えるようになることは、生活のサイクルを変える大きな一歩だと思います。
先生)まだ参加した教員は全体の2割程度ですが、参加したメンバーの間では日常的にAIの話題が出るようになりました。足踏みしている人たちにも早くこの環境を提供したいです。例えば、文章作成においても、これまでは不安から何度も推敲していましたが、その時間が劇的に減りました。これまでは8割の力を考えて打ち込み、残りの2割で神経を使って推敲していましたが、今は6割ほどを大まかに作ってAIに放り込めば、9割5分まで仕上げてくれます。
先生)矛盾がないか確認するだけで済みます。最終的な確認を自分ですることは当然ですが、時間的には1/10か、それ以下に減った感覚です。気を遣うメールの返信なども、その都度すぐに対応できるようになりました。
一方で、「AIがない時代の方が、自分で論文を書く方が楽だった」という学者の意見を耳にしたことがあります。AIによって大量の論文が生成されるため、それを読み込んで精査する手間が増え、かえって大変になったという話です。これを聞いて、「AIの導入によって、単に楽になるわけではないのだな」とも感じました。
先生)そうです。ですから、第3、第4のハードルの先にはそういう世界が待っているのだと思います。最近教員の間で話題になるのは「モラルをどう身に付けさせるか」ということです。私たちが最初に恐れていたのは、モラルを理解しないまま使って失敗することでした。しかし、これからは生徒に使わせていく中で、生徒自身の情報モラルをどう育てていくかが課題になります。
先生)社会人になってから情報漏洩などの問題を起こさないためにも、学校でのモラル教育は必須です。おもちゃの刀ならちゃんばらごっこで済むかもしれませんが、生成AIは本物の刀のようなものです。強大なツールですから、その危険性を理解させた上で使わせる必要を感じます。
モラルを確立していれば、どんな新しい技術が来ても世の中のために使える人間になるのではないでしょうか。これからの教育においては、AIそのものの教育よりもモラル教育が重要であり、そのために教員がまず技術を知る必要があります。これからはAIを使いこなしながら生徒の『創造性』や『探究心』を引き出し、目から鱗が落ちるような発見を促す教育をしていかなければならないと感じています。
先生)子どもたちはAIが身近にある環境で育っているため、空気のように当たり前に使ってしまいます。その中で「自分で考えることがなぜ大切なのか」を伝えていかなければなりません。実感を伴った指導をするためにも、まずは教員が先にAIについて学ぶことが重要だと考えています。
先生)私立学校だからこそのスピード感で進められる部分もありますが、DXという言葉に踊らされて「一部分だけが進んでいるように見える」状態は避けたいです。一部の先生だけが突出して進んでいるのではなく、学校全体として「総体(全体)」のバランスが取れていることが本校の強みだと思っています。
先生)学校では多くの生徒の個人情報を扱っていますので、セキュリティの確保は最優先です。便利さを追求する一方で、守るべきところは守るという確固たる姿勢が必要です。そのためにも、スクールガーディアンさんのような専門的なサポートを受けながら進められたことは、教員にとって大きな安心感になりました。
先生)今後は、今回学んだ文字起こしや要約といった具体的な機能を、より多くの先生が業務に使えるように広げていきたいです。AIを「楽をするためのツール」ではなく、自分たちの「伴走者」として捉え、生徒に寄り添う時間を増やすために役立てていきたいと考えています。
生成AIという強力なテクノロジーに対し、「教員自身の不安」と「生徒へのモラル教育」という2つの課題に真摯に向き合ってきた同校。「AIに任せられる作業は任せ、生まれた時間で生徒と向き合う」という姿勢は、単なる業務効率化を超え、これからの時代における教育のあり方そのものを示していると感じます。
テクノロジーを恐れるのではなく、正しく理解した上で「心強い伴走者」として迎え入れる――。その姿勢をそのまま生徒との学びにつなげていく。学校全体の足並みを揃えながら進む同校の挑戦を、今後も強力にサポートしてまいります。
学校法人:学校法人共立女子学園
学校名:共立女子中学高等学校
所在地:〒101-8433 東京都千代田区一ツ橋2丁目2−1
HP:https://www.kyoritsu-wu.ac.jp/chukou/