左:グローバルビジネス事業統括/チェ・ジェミンさん
右:日本事業担当/サ・ユギョンさん
渡邊(聞き手): はじめに、日本の学校や先生方に向けて、ZEPの立ち上げ背景や概要についてご紹介いただけますか?
ZEP: ZEPはもともと、新型コロナウイルスの感染拡大が激しかった時期に韓国で立ち上げられたサービスです。当時はオンラインへの移行が急速に進み、ZoomやGoogle Meetなどのツールが普及しましたが、「画面越しでは実際に繋がっている感覚が得られにくい」「オンライン疲れや孤独感を感じる」といった声が多く聞かれました。
そこで私たちは、「オンライン上でも、まるでオフラインのように楽しく対話や交流ができる空間を作りたい」という想いからサービスをスタートさせました。当初は企業のイベントや展示、公共施設の公開など幅広い用途を想定していたのですが、実際にサービスを展開する中で最も「人との触れ合いや対話」を重要視していたのが教育現場だったのです。先生方から非常に高い評価と反響をいただいたことで、現在のEdTech分野へ本格的にシフトしていきました。
渡邊: 当初から教育に特化していたわけではなく、先生方からの現場の声を受けて徐々に方向性を定めていかれたのですね。
ZEP: はい。実際の学校現場では、対面授業ができない中で子どもたちの集中力を維持することが大きな課題でした。ZEPの中にあるゲームに似たコンテンツを活用することで「まずは子どもたちを画面に集中させることができる」という点が、導入の決め手として高く評価されました。

渡邊: 実際に教育現場で使われていく中で、開発側として「このような使い方は想定していなかった」という驚きの活用事例はありましたか?
ZEP: 一番驚いたのは、ZEP空間の中で学校の「運動会」を開催された事例です。私たちが用意していた校庭にトラックのあるメタバース上のマップを学校側が見つけ、アバター同士で走って順位を競うイベントとして活用されていました。もともとはコミュニティ向けの遊ぶ空間として作ったマップだったのですが、実際の学校行事として活用されたのは完全に想定外でしたね。
渡邊: メタバースならではの面白いアイデアですね!徐々に導入が進んでいった中で、対面授業と比べてメタバース空間を利用することは、子どもたちにどのような心理的変化が見られたのでしょうか?
ZEP: 主に2つの大きな変化があります。
1. 失敗や発言に対するプレッシャーの軽減
実際の教室では、人前で発言して間違えると「恥ずかしい」という心理が働きやすいですよね。実際、人は無意識に仮面(役割)をかぶって周囲の目を気にしながら生きています。しかし、メタバース上では「アバター」というフィルターを介すことで、失敗に対する心理的負担(プレッシャー)が軽減されることが分かってきました。その結果、生徒たちは普段より積極的に発言や質問ができるようになります。
2. 学習に対する主体性の芽生え
普段は勉強に興味を示さない生徒が、後述する「ZEPクイズ」などのゲーム性のあるコンテンツをきっかけに、「最後までやり切りたい」という想いから自発的に教科書を開いて勉強し始める、という変化も報告されています。

渡邊: 現在、日本の学校でも先生方の「忙しさ」が大きな課題になっていますが、韓国の学校現場での課題や、それに対するZEPの取り組みについて教えてください。
ZEP: 韓国でもまったく同じ課題があります。先生方は授業だけでなく、生活指導、保護者対応、事務作業、学級運営など、あらゆる業務を1人で抱えており非常に多忙です。私たちが定期的に先生方へヒアリングを行う中で見えてきたのは、「授業の準備といった繰り返される細かな作業に、膨大な時間が費やされている」という事実でした。
そこで、「テクノロジーで先生の負担を減らし、本来やりたかった授業づくりをサポートしよう」という発想から生まれたのが「ZEPクイズ」です。
※ZEPクイズ:AIが授業用の問題作成を補助し、先生は生成された内容を確認・修正するだけで準備が完了します。一から問題を作る時間が大幅に削減され、その削減された時間で生徒たちが楽しく学べる環境を提供できるようになりました。
渡邊: 先生の準備時間を減らしつつ、生徒の学習意欲も高められる素晴らしい取り組みですね。一方で、オンライン空間における匿名性やネット上のトラブル(いじめや不適切発言など)についてはどのように対策されていますか?
ZEP: 顔が見えないオンライン空間だからこそ、ネガティブな言動が激化するリスクには非常に慎重に対応しています。ZEPではAIを活用し、不適切な発言や悪口があった場合に自動でチャットを制限する機能などを実装しており、子どもたちが安全に過ごせる空間づくりを徹底しています。

渡邊: アジアをはじめ日本市場への展開も進められている中で、日本の先生方と接して感じた特徴や印象はありますか?
ZEP: 日本の先生方は、新しいサービスを導入する際に非常に慎重かつ誠実だと感じます。「授業のどの段階でどのようにサービスを使うべきか」「先生や生徒への負担や影響はどのくらいあるか」を事前に深く考え、効果をしっかり検証してから導入しようとされます。一方韓国では、授業を主体的に運営しようとする先生方が多く、その過程で新しいツールを導入することにも比較的積極的であると感じています。
だからこそ日本市場に対しては、「韓国の学校で好評だから」と一方的に押し付けるのではなく、先生方と対話を重ね、フィードバックをいただきながら一緒にサービスを改善・展開していくことが重要だと考えています。
渡邊: 現場の体験やプロセスを大切にする姿勢は、まさに日本の学校において重要なポイントですね。ちなみに教育に「ゲーム性」を取り入れることに対して、遊び感覚になってしまうのではないかという懸念を持つ方もいらっしゃるかもしれません。教育にゲーム要素を取り入れるメリットとは何でしょうか?
ZEP: 最大のメリットは「エンゲージメントの獲得(自発的な動機付け)」です。 どれほど素晴らしい教材や熱心な先生の授業を用意しても、勉強そのものに興味がない子どもにはなかなか届きません。しかしゲーム性の要素があると、誰かに強制されなくても「自分でやりたい」と思って取り組み始めます。まずはテクノロジーとゲーム性を組み合わせることで「勉強への興味の芽」を育て、そこから一歩踏み出してもらうことが重要なのです。

渡邊: 最後に、ZEPが目指す世界規模でのミッションや、日本の先生方へのメッセージをお願いします。
ZEP: ZEPには「No Child Left Behind(子どもを誰一人取り残さない)」というグローバルミッションがあります。環境や得意・不得意に関わらず、すべての子どもが参加し、学べる環境をAIやテクノロジーの力で世界中に作っていきたいと考えています。そのためにも、日韓問わず先生方との直接的な繋がりやインタビューを定期的に行い、現場のニーズに寄り添ったアップデートを続けています。
また、私たちが最も強調したいのは、「AIやテクノロジーは決して先生の代わり(代替)ではない」ということです。
AIはあくまで強力な「道具」に過ぎません。単調な反復作業や準備業務をAIが肩代わりして時間を節約することで、「先生が生徒たち一人ひとりと直接向き合い、接する時間を増やす」ことこそが本来の目的です。ZEPがそのための最良の道具となれるよう、今後も日本の教育現場に貢献してまいりたいと思います。
渡邊: まさにおっしゃる通りですね!単に生成AIや新ツールを導入すること自体が目的になってはならず、「現場の負担を減らし、生徒たちに向き合う時間を増やす」という本質を見失わないことが大切だと再確認できました。今後もぜひ一緒に教育現場を盛り上げていきましょう!本日は貴重なお話をありがとうございました。
