まずは現在流行している顔加工アプリについてご紹介していきます。
・SNOW
若者の間では定番のアプリで、根強い人気があります。
輪郭をスリムにする・鼻筋や目の大きさを変える・毛穴を目立たなくするなどをこまかく設定することができます。さらにリップやカラコン、泣きぼくろをつけるなどメイクを加工で行うことができ、なりたい自分のイメージに近づけることができます。
フィルターも充実しており、流行のフィルターも一目でわかります。
2023年はうさぎ年ということで、うさ耳がつくフィルターが流行しています。
・PhotoDirector
スマホで簡単に本格的な加工ができるアプリです。
合成写真や曇りの空を晴れにする空の置き換えなど幅広い加工が可能です。また、小顔修正機能・美肌加工機能がついており、自然に顔を加工することができます。
顔加工、その他エフェクトどちらも本格的な加工ができるため、このアプリ一つで事足りるとして人気です。
・FaceApp
一時期注目を集めたアプリです。AIを用いて写真を加工し、性別を変えたり老化させたり若返ったりするなどが話題になりました。
多くの芸能人がSNSで発信し、幅広い年代が利用しました。
ただし、撮影した写真がFaceAppまたは第三者に利用されている可能性があるとする声があるなど、問題点が指摘されているアプリであり、利用には注意が必要です。
・YouCamメイク
このアプリでは顔だけでなく体型の加工が可能です。
腰回りや腕・足を細くすることができるだけでなく、まわりの背景がゆがまないようにできるのもポイントです。
若者の間では、顔を加工するのではなく、顔を隠して投稿する人も少なくありません。
この背景には、
・顔写真の投稿は無断使用のリスクや、顔という個人情報を発信することへの抵抗感はあるが、楽しい雰囲気は伝えたい。
・自分だけが可愛く写っているが一緒に写る他の人が微妙な写真を投稿してしまうと反感を買う。
といった理由があります。
顔の隠し方も様々な方法があります。
・文字や絵文字で加工
目線に写っている人のユーザーネームを入れたり、メッセージを入れることで顔を隠すやり方です。
また、ハートやスマイルマークの絵文字を入れて隠すこともあります。
簡単に加工することができるのでよく使われる手法です。
・アートに加工
モナリザなど有名絵画の目元のみを切り抜いて自分たちの目元に合成して加工したり、顔全体を渦巻のように歪ませる、アートな加工方法です。おしゃれに顔を隠せるユニークな方法として使われています。
・ZEPETOで加工
若者を中心に大流行した「ZEPETO」を活用した加工です。
ZEPETOとは、自分そっくりのアバターが作れるアプリです。目の色や髪型など自由にカスタマイズできるだけでなく、ファッションやヘアスタイルを変えられたり、他のアバターと交流することもできます。
このZEPETOを自分の顔に合成することで、雰囲気をあまり変えることなく顔を隠すことが可能です。
顔の画像加工は友達と楽しんだり、自分をきれいに見せる方法として浸透してきました。一方で様々な問題も発生しています。
こうした問題点について、三本の記事を中心にご紹介していきます。
・加工によるいじめ
加害者の生徒がいじめの対象になった子を隠し撮りし、顔をアプリで変形したり老いさせたりして、どれが一番おもしろいか皆で競い合って楽しむという事例がありました。
また、神奈川県では、2019年に無線通信機能「AirDrop」を使い、加工した顔写真をクラスメートに拡散されるいじめが発生しました。
この事例はいじめ防止対策推進法に基づき「重大事態」と認定されました。
参考記事
【デジタル加工で変形の顔画像、クラスで拡散された男子高校生が自傷行為】
https://www.yomiuri.co.jp/national/20201112-OYT1T50017/
簡単にできてしまう画像加工だからこそ罪悪感が芽生えにくいのかもしれませんが、人を傷つける行為はいじめに他なりません。相手が傷つくことをしないという当たり前のことを守ってほしいと感じます。
・美容整形を望む人も
美容外科クリニックの院長を務める前田拓摩医師は、若者を中心に「リアルも同じでなければならない」と追い込まれてしまい、美容整形を望む人が増える一因になっていると考えます。
’’「加工後の顔にしたい」という希望はすごく多い。「実際にあったら違うじゃん」「違う人かと思った」と言われることに対する恐怖から、リアルでもその顔でいたいという強い思いを生むと思う。’’と語ります。
しかし、10代の整形にはリスクもあります。
”1つは、心が未成熟であるということ。自分が受けた施術、顔の変化を受け入れられなかったり、ダウンタイムの期間は心にもすごく負担がかかる。“ダウンタイム鬱”という言葉もあるように、『なんで手術を受けちゃったのか』と後悔することがある。
2つ目は、成長による顔の変化。医学的な第2次性徴は18歳くらいで終わると言われているが、高校生が大学生になる、社会人になるという過程で変化していく部分もあると思う。その変化でマイナス面が生じる可能性がある。
3つ目は、傷。手術をして満足したけど、傷を隠そうとするコンプレックスが新たに生まれてしまう。”
こうした若年層の美容整形を儲けになるからと積極的に手術を行う、業界構造の問題点についても指摘しています。
参考
「“加工の顔にしたい”の希望が多い」 写真アプリを現実に? 17歳少女の整形手術を断った美容外科医が“SNSの闇”に訴え
https://news.yahoo.co.jp/articles/667f8ed7b29c534c2b706aa386a608b8cbc44328
顔の画像加工は簡単に自分を美しくみせてくれるものですが、はまりすぎると自分の顔に嫌悪を感じてしまいます。またSNSの発展により、美しい人が簡単に見れるようになり、より嫌悪を感じるのかもしれません。美容整形が悪いとは一概には言えませんが、親や周りの人に相談したり、自分自身と向き合ってよく考える必要があると感じます。
・加工後の顔しか残らない
「加工後の顔しか残っておらず、元の顔が見れなくなってしまった。元の写真をのこしておけばよかった。」そう綴った高校生の記事が話題を呼びました。
上手に活用しないと思い出が残らないのではないか、画像加工とうまく付き合う必要があると問題提起しました。
参考
【友達との思い出写真は「加工後の顔」ばかり 元の写真も残せば…高校生の後悔】
https://news.yahoo.co.jp/articles/15766c610bcd44c435d2fc345bd2cc942cf35b02
一方で、自分の無加工の写真に嫌悪を感じ、廊下に張り出される修学旅行の写真の中から自分が写った写真を持ち去ってしまったり、卒業アルバムの自分の顔を塗りつぶしてしまう事例も発生しています。
どんな形であれ、後から見返した時に後悔のない形で思い出を作っていって欲しいと感じます。
友達と楽しんだり、SNSを充実させたりするために使われる顔の画像加工。様々な機能や新しい方法が次々と出現し、進化し続けています。
顔の画像加工は悪いことではありませんが、節度を保って扱わないと自分や周りの人を傷つけてしまう事態に発展しやすいものでもあります。
顔の画像加工の問題点を知り、自分自身を律して使用することが望まれます。